
とになっており、またGMDSSを義務づけられていない船舶に乗船する場合もあるので、航海士の資格要件として、全員にGOCを求めるのは過大要求であるという強い反対があり、結局妥協案として、船長・航海士は無線通信規則に基づくVHF無線通信を行うことができるなんらかの資格証明書を持てばよいが、GMDSS義務装備船に乗船する場合には、GMDSS通信士資格[GOCまたはROC(RESTRICTED OPERATOR CERTIFICATE)]が必要であるということになった。 なお、船長・航海士の能力基準の中で、「安全航海のためのレーダー及びARPA(衝突予防援助装置)の使用」については、シミュレータによる訓練が強制されることになった。シミュレータによる訓練について、最初は大幅な強制化や海上履歴の軽減なども検討されたが、各締約国におけるシミュレータの設備と訓練の現状に大きな格差があるため、前述の2項目だけが強制化された。しかし、強制化された訓練以外でも、能力評価及び資格更新の際の能力維持の実証に、シミュレータを使用する場合には、条約の規定に従った性能基準や評価手11園が適用されることになった。 (5)1969年トン数条約の完全実施に伴う船長・航海士の資格区分の変更 トン数条約が1994年7月から完全実施されたのに伴い、船長・航海士の資格を区分する船舶の基準トン数が従来の登録総トン数から国際総トン数に変更されたが、このため船型によっては大幅にトン数が増加して、乗船している船舶に現在の資格証明書では乗船できなくなる者を救済するため、現在の区分基準トン数200/1,600トンをそれぞれ500/3,000トンに読み替えることになった。ただし、この読み替えはすべての船舶に適用されるので、かえって規制が緩和され安全上問題があるのではないかという懸念が表明された。 (6)RO−RO PASSENGER SHIPの乗組員の特別訓練要件 条約改正作業中の1994年9月にバルト海において発生したRO−RO客船ESTONIA号の沈没事故を契機に、IMOが急遽取り組むことになった「RO−RO客船の安全対策」の一環として、改正STCW条約にRO−RO客船の乗組員に対する特別訓練や資格証明の要件が追加されることになり、タンカーの乗組員に対する規定と並んで、付属書第V章にV/2規則として盛り込まれた。なお、RO−RO客船以外の乗組員に対する要件についても、一足遅れて追加されることになり、V/3規則として平成8年12月に開催される第67回MSCで承認の上、改正のため各国へ回章されることになった。 (7)条約付属書の整理とSTCWコードの新設 従来の条約付属書には、各規則ごとに資格証明に必要とされる詳細な技術的要件が、APPENDIX(付録)として含まれていたが、改正された付属書は基本的な原則や法律的な
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